『石巻赤十字病院の100日間 東日本大震災 医師・看護師・病院職員たちの苦闘の記録』 石巻赤十字病院、由井りょう子/著
今回のおすすめは「石巻赤十字病院の100日間 東日本大震災 医師・看護師・病院職員たちの苦闘の記録」です。
2011年3月11日に起こった東日本大震災から12年。被災した方々の苦難は今も続いています。この本は、地震発生直後からの石巻赤十字病院の詳細な記録です。
地震発生からの緊迫した状況が伝わる
日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した大きな揺れに襲われ、患者の安全を必死に、しかし冷静に守る医療者の姿が記録されています
極限下で行われた医療を知ることができる
石巻赤十字病院では災害時に各自の行動が明記されているマニュアルがあり、全員が迅速に対応を始めることができました。しかし想定外のことも起こり、全員を救いたいが救えない苦悩、自分や家族のことを後回しにせざるを得ない思い、など極限下の人間の感情が胸に迫ります。
災害に対する備えが学べる
日頃から災害時の備蓄や訓練を行っていた病院でも、想定できなかった状況に次々と襲われる中、医療者としての使命感から不眠不休で対応しました。自宅から避難所に逃れ、そこで医療支援を行うことになった看護職も、自身も被災者であるのに時間の感覚を失うほど忙殺されました。被災もしている一人の人間、一つの病院に負担がかかりすぎないように、被災地域以外の病院は搬送先として受け入れ態勢を整えておくことや、人材を派遣できる体制が必要です。
まとめ
この本の発行は2011年10月です。震災からわずか半年で発行されています。短い期間でまとめられた記録であるにもかかわらず、病院で診療した被災者の人数や現場の推移などが、詳しい数値とともに書かれていることに驚かされます。そのような客観的な記録であるとともに、震災から間もなく書かれたことで、現場で苦闘した方たちが味わった葛藤も生々しく伝わってきて、震災を風化させないためにも読んでいただきたい本です。