『女性法曹のあけぼの 華やぐ女たち』 佐賀千恵美/著 金壽堂出版 2013年
今回のおすすめは「女性法曹のあけぼの 華やぐ女たち」です。
2024年春から放送のNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルとなっている三淵嘉子と、中田正子・久米愛という3人の女性弁護士の人生が中心の記録です。3人は1940年に日本の女性で初めて弁護士になった方たちです。著者自身も検察官や弁護士として働き、本書を執筆時は家事・育児をしながら関係者にインタビューを行った労作です。1991年出版の復刻版ですが、絶版となっていました。2023年12月に日本評論社から再度復刻版が発売されています。
女性が学ぶことが難しかった時代にも行動した人たちがいたことがわかる
今の日本では当たり前のように女性にも学ぶ自由・権利がありますが、三淵嘉子ら3人が生まれた時代には女性が入れる大学もなれる職業もわずかでした。女性の地位が低く見られていた中、明治大学女子部ができるまでの道のりが詳しく書かれています。「女性に法律を教え、弁護士を育てよう」という考えた男性達がいて、そしてそこに入学した女性達がどんな道を歩んだのか、大変興味深い内容です
弁護士を志した女性たちの人生に触れることができる
本書では取材時に唯一生存されていた中田正子へのインタビュー、三淵嘉子・久米愛の家族や関係者へのインタビュー、講演記録などから、3人の公私両面の生活が書かれています。どのような家庭環境で育ち、弁護士を志したのか、とても個性的でユニークなエピソードに法曹の世界に詳しくなくても引き込まれます。そして3人とも結婚・出産を経ても仕事を続けました。結婚相手はどのような人だったのか、子どもから見てどのような母だったのかも大変面白く、3人の人生観や仕事観に感銘を受けます。
まとめ
ゼロから始めた人達が苦労して切り拓いてくれた歴史の延長線上に今の私達がいることを普段は意識していませんが、本書を読むと、弁護士という職業を通して、女性が決して劣った人間ではないことを証明してくれた人達への尊敬の念が湧きました。歴史を学ぶのは、今自分がどう生きるかを考えさせてくれる大事なことと考え、本書をおすすめします。